狐の王国


2006年08月11日(金) [過去の今日]

#1 感覚的な正しさ、論理的な正しさ、そして実際的な正しさ

なんか最近、無断リンク関係の話題を目にする機会が増えた。blog時代になってまだWWWの常識を知らない人たちが増え、そういう層がアクセス解析を使いこなしはじめたからだろうか。

しかしなぜこうも無断リンク禁止をうたうサイトが後を絶たないのだろうか。

思うに、無断リンク禁止は「感覚的に正しいこと」なのだ。そういう感覚的な正しさは、子供を見てると気付くことが多い。例えば誕生日のプレゼント。兄弟姉妹がいる時は彼らの分も買っておかないと、不平等感を感じさせてしまう。お小遣いも年齢が近いと同額じゃなきゃいけなくなる。お父さんのおかずが一品多いなんてのも、子供心には間違ってるように思えるものだ。

蛇足的だが、俺が小学校に上がる前、地球儀を買ってもらってすごく興奮していた事がある。地球は丸いんだ、日本ってちっちゃいな。でっかいところがいっぱいあるんだなあ。

そんな興奮を、俺は友達に語った。地球って丸いんだぜ。平らに見えるけどホントは丸いんだ。でっかすぎてわかんないケド。

帰ってきた反応はこうだ。
「丸いわけねーじゃん、どこが丸いんだよ、どこまでも平らじゃねーか」
「じゃあ地面ほったらどっか外国にいくのかよ。その外国の人空に向かっておっこっちゃうじゃないか」
「やーい、嘘つき、嘘つきー!」

そう、感覚的には「地球は丸い」なんてのは正しくないのだ。ガリレオの苦しみはいかんばかりか。

しかし、ガリレオ(と小さい頃の俺)が正しいことを言ってたというのは、自然科学が証明してくれている。論理的には正しいことだというのは、今はもうみんなわかっている。俺の子供の頃の経験は、そういう知識を抜きにしたときの人間の判断力をかいま見せてくれた。

そういう素朴な部分での「感覚的な正しさ」では、リンクするという行為が 手を繋ぐ行為に等しい と感じられたりもするのだろう。幸いこの人は 地球が丸いことに納得してくれた ようだが。

しかし、今後もこの問題は定期的にわいてくるだろうな。感覚的な正しさが、無断リンク禁止を正しいと教えてる限り。

本当の正しさ:

哲学者カントによれば、人間には感性と理性と悟性というものがあるそうだ。感性は上記のような「感覚的な正しさ」を教えてくれるし、理性は「論理的な正しさ」を教えてくれる。

そして悟性というのは、最終的な判断を下すところ。感覚的な正しさと論理的な正しさとを結合し、妥協点を見出すところと言い換えてもいいかもしれない。これが「実際的な正しさ」となる。

無断リンク問題に限らないが、感覚的な正しさと論理的な正しさの間で論争が起きる(後者はモヒカン族などと呼ばれてるらしい)ことがよくある。しかし、どちらも実際的な正しさではない事も多いのだ。正しい論理も、その論理が立脚してるところは感覚的正しさであることも少なくない。

一度自分を無知な状態において、感覚的正しさを感じてから知識を戻してみたい。そうすれば、いわゆる「敷居の高さ」の正体や、人間が素の状態で何をどう感じるか、はっきりわかるのではないかと思う。

それはきっと、自分が何かを作るときに、役立つだろう。叶わぬ事だとは思うが。

(@177)

この記事のURI

最近の記事

以上、1 日分

タイトル一覧


カテゴリ分類
Powered by hns-2.19.8, HyperNikkiSystem Project

過去にこの日記が置いてあったcgi.misao.gr.jpは廃止されました。それによって記事へのURIが変わってしまっています。cgi.misao.gr.jpをwww.misao.gr.jpと置き換えるだけで同じ記事にアクセスできるはずです。

Sugano "狐志庵" Yoshihisa(E) @ 美紗緒ネットワーク <koshian@misao.gr.jp>
日記管理ページ