狐の王国


2005年12月31日() [過去の今日]

#1 なぜ派生物のコードまで開示させなくてはならないか

非常にすばらしい洞察(+1)だと思うので引用。

自由を確保するなら、生産したソースコードそのものの自由が確保されればそれで良いのではないでしょうか。
そのためには、業務ソフトウェア生産現場と同様、先行技術調査をして、既存の特許に抵触しないソースコードを生産し、BSDLでリリースすれば良いのではないでしょうか。
社会のルールに適合した、自由に利用可能なソースコードです。

何故、生産したコードを利用する開発者のコードの開示まで要求するのでしょうか。
何故、既存の特許権の侵害までをも自由に含めたがるのでしょうか。
これが理解不能です。

そう、自分の作った分の自由を確保するためには、BSDライセンスで充分でしょう。これはまさしくその通りだと思います。

ではBSDライセンスでは不十分な場合とは何か。それは「フリーライダーを許容したくない」と作者が思ったときだと、私は考えます。

BSDライセンスはフリーライダーも許容するという意味で、真に自由なライセンスであると思います。ですが、それを快く思わない作者もいる。そういう作者のために、BSDライセンスよりも多少自由を制限するライセンスがあるというのも、それはそれで非常によいことだと考えています。

「ライセンスは何選ぼう?」 という文書を書いたことがありますが、ここで挙げたArtisticライセンスはGPLとはまた別の角度からフリーライダーを制限しようとしています。それがArtisticライセンスの特徴とも言える「単体販売禁止」で、製品の一部として添付するのはかまわないがそのソフトそのものを販売してはいけない、という条件ですね。これによって売るだけのフリーライダーを抑止することができる(と少なくともライセンスを定義した人は考えてる)わけです。フォントのライセンスなどには適してるかもしれません。

GPLの場合は「改変して売る」フリーライダーを抑止できる、と言えるでしょう。先日、 どこぞのフリーウェアを販売してた企業が契約終了後も改変したものを売っていたとかいう話題 がありましたが、これもGPLならこのような事態にはならなかったでしょう。GNUのサイトにある文書をみると、フリーソフトを仕事の道具として利用してる場合、使いながら不満な点やバグを修正したユーザーが、その雇用主によって改変版を独占されないようにしたい、というシーンを想定してるようです。せっかく改良点を見付けてもらったのに元のソフトにマージできなくされるのは、(雇用主はともかく)ユーザーにとっても開発者にとっても不幸である、ということですね。実際にviなどはそうやってAT&Tに搾取されてしまったあげく、nviという互換ソフトを作者自らが書き直すはめになっていますね。これもGPLなら、ということなのでしょう。

雇用主からすれば仕事中に金にならない作業をされるのはたまらん、ということなのでしょうが、実際に仕事をしてるプログラマからすれば売りものではなく道具として使ってるソフトまで雇用主に独占される理由は無いし、道具の手入れも仕事のうちだ、ということでしょう。

社会のルールというのは明文化された法律のことだと思います *1 が、法律の制定は現実から数歩遅れているものです。必ずそのすき間をついた攻撃がやってくるでしょう(viのように)。それらと闘争するための武器は、少なくともその存在を肯定できないものではないと思います。

フリーライダーをどこまで許容するかは作者自身が判断すればいいことでしょう。しかしながら、GPLがその特性ゆえにフリーライダーを抑止するつもりで自分がフリーライダーになっていないか、という批判はあって当然だと思います。

ですが、そこはあくまでバランスの問題であって、GPLの存在そのものの問題ではないと、私は考えています。今度のGPL改訂作業で逆フリーライダー度があがるようであれば、それは真向から批判すべきでしょうし、Linuxのように後継バージョンが適用されないよう、各所に呼びかける必要もあるかもしれません。

まあ、特許についてはよくわからないので、何とも言えないのですけども。mpeg2ファイルが取り扱いにくいのは困ったものではあります。

(@545)


*1: 明文化されてないルールがあるのも知ってるけども、それについては考えたくないというのが本音。だってあちこちでルールの適用が違いすぎるんだもの。
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Sugano "狐志庵" Yoshihisa(E) @ 美紗緒ネットワーク <koshian@misao.gr.jp>
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