狐の王国


2003年09月19日(金) [過去の今日]

#1 rootから/へのメッセージ

昨日、いい本に巡り合えた。 「rootから/へのメッセージ」 という本で、1986年からおよそ2年に渡ってUNIX MAGAZINEに連載していたものをまとめたものらしい。少々高かったのだが、うっかり古本屋にあったものを衝動買いしてしまった。でもその価値は十分にあった。これはいい本だ。発売されたのは1991年だそうだが、当時すでに 山形浩生氏による書評 が出ている。

1980年からUNIXのrootとして活躍した著者の苦労話やノウハウを、鉄道やラジコンやトンネルの例え話を上手に使って説明してるのが興味深い。が、それ以上に俺にとっては80年代のUNIXの状況が見えたのがおもしろかった。当時のUNIXは決して堅牢なものではなく、また一般ユーザーが動かしてるプロセスによってダウンさせられたりもよくしていたようだし、1億も2億もするワークステーションで、同時に立ち上げられるコンパイラのプロセスは3〜4個が限界などと書かれてたのも驚いた。PCの世界で言うなら486かその程度の処理能力だったんだろうか。冷静に考えれば当然かもしれないが、Celeron1.4GHzのLinuxマシンを常用してる自分がものすごく贅沢に感じてしまった。

特にrootとしての管理スタイルや工夫の数々は驚愕とも言うべきものだった。今でこそ1ユーザー1ホストが当り前だが、当時は1ホストに数十人規模のユーザが同時にログインしてるのが当り前だったというのは、以前から聞きかじってはいた。しかし、その運用ノウハウたるや技術のみならず政治的経済的な視野まで含めていく姿には、ただただ感嘆である。改めて「昔のrootはすごかったんだなあ」と実感させられた。こんな17年も昔の文書が、今の時代に生き生きと伝わるなんて、UNIX以外では考えられないんだろうなあ。とにかく名著である。

rootの在り方:

俺自身、7台のDebianホストのrootとして、時にはFreeBSDのホストのrootとして動いている。だが今のマシンは多数のユーザが常時ログインして作業するようなホストではないし、シェル操作をするユーザー自体も少ない。マシン自体も処理能力が高いので、そう簡単に過負荷状態にはならない。rootをやるのも楽になったもんだと思う。

今日になって「よしだともこのroot訪問記」の連載をちらりと見た。ずいぶん昔からある連載で、古いものはウェブで読めたので、UNIXをいじり始めた頃によく読んでいた記憶がある。だが、今の連載を見てみると、なんだか昔とはずいぶん違ってるように感じる。

昔はrootがどんな工夫をしてるか、どんな運用をしてるか、どんな苦労があったかというあたりがおもしろかったように思うのだが、今月号の グッデイ のroot訪問は、普通の会社訪問記事にしか見えなかった。考えたら当り前かもしれない。今のrootは多数のユーザーを抱えることはほとんど無いし、あったにしてもメールやウェブだけのユーザだから、昔のようなrootがrootらしい管理をすることも無くなっているのだろう。そしてUNIXやLinuxで仕事をする人間なら、たいていはroot作業もするだろう。会社ではしなくても、勉強と称して自宅にLinuxをインストールする姿はよく見受けられる光景だ。俺みたいな素人が7台ものホストのrootをやってるなんて、ちょっと前じゃ想像だにできかなった状況なのだろうなあ。

以前から言われているように、rootという神がいて、一般ユーザを管理してくれる、という状況はもう無くなったのだろう。その代わりさほど技術力も政治力も高くない人間がrootをやっている。この傾向はデスクトップ環境としてのUNIXが着目されるにつれ、より大きくなった。何も知らない人間がいきなりrootをしなくてはならなくて、そのための仕組みの整備が急務となっている。

さてはて、root作業が楽になることが、どういう影響を及ぼすのだろうか。ただでさえUNIXを使える人間が減っていると言われているのに。知らなくても使える時代の恐ろしさを、まだ誰も気づいてないのだろうか。

学ぶもの:

「rootから/へのメッセージ」の著者・高野豊氏は、奥付の略歴によると1948年生まれだそうである。ということは、現在55歳くらいか。我々の世代は、この世代のrootから学ばねばならない事が、もっとあるんじゃないだろうか。そう思う半面、この時代の事は参考程度にはなっても、もはや役に立たないのではないかという疑念もある。懐古趣味にならず、温故知新にするために、何か手前にワンステップが必要なのかもしれない。

(@191)

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#2 Swen.A

2年も前に発見されたセキュリティホールを付いたウィルスだと。なんでこんなのが今ごろ蔓延してるんだ……。

IPアドレスを利用するのに国際免許制を導入した方がいいんじゃないのか? この手のウィルスばらまいてるアドレスの所有者に罰則与える方向で。

(@324)

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Sugano "狐志庵" Yoshihisa(E) @ 美紗緒ネットワーク <koshian@misao.gr.jp>
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