狐の王国


2007年04月17日(火) [過去の今日]

#1 「やりたいこと」や「個性」が無い人間なんていないんだ

この前書いた記事 にたくさん はてブでコメント を頂いた。ありがとうございます >みなさん

しかし、コメントを読んでると、あまりにも簡単に納得されてしまってる方もいらっしゃるようなので、書いた本人としてはいささか恐怖を覚える。前回の記事は大人たちから向けられる「やりたいことを見つける」とか「個性が大切」だとかいう変な価値観に、子供たちが惑わされてる事へのアンチテーゼとも言うべきものだ。別に夢を持った人生を否定する気は無いし、いつまでも夢見てたって構わないと思う。というか、そもそも俺がそういう人間だ。

そういう面を若干補完するために、今回は別の視点で書いてみようと思う。

「やりたいこと」はなんでもいい:

どうも子供たちを見ていると、「やりたいこと」というのを「仕事にできる何か」だと思ってるふしがある。実はそうじゃないんだ。「やりたいこと」は言葉そのままの意味であって、「仕事にしたいこと」とは別なんだ。

例えば、「ごろごろ寝転がってテレビ見ていたい」というのがやりたいことだという少年がいるとしよう。これはこれでいいのだ。ごろごろ寝転がってテレビを見つづけるためにはどうしたらいいか、と考えればいいだけのことだ。

「ごろごろ寝転がってテレビを見ている」ためには、まず家とテレビと電気と受信料が必要だ。幸いなことにこれはすべてお金で手に入る。ということは職業は何でもいいわけだ。 しかし、ずっと寝転がって動かないでいると健康を損なう恐れがある。仕事は体を動かすものがいいだろう。また、テレビを見る時間を作らなければいけないから、極力ちゃんと帰れて休める仕事がいい。

とすると、この少年が選ぶべき職業は、大工や左官といった職人だ。給料もそこそこいいし、暗くなったら作業できないので夕方には帰れるし、雨がふったら仕事にならないので休みだ。これなら仕事以外の時間はずーっと寝転がってテレビを見ていられるし、仕事で体を動かしてるので運動不足で不健康になることもあるまい。

大工や左官をやるためには、それなりの体力が必要だ。それに上下関係も厳しいので、できるだけ早くそういうところに馴染まなくては続かないだろう。

ここまで来れば、少年が今やるべき事が見えて来る。運動部に入って上下関係を覚え、体を鍛えることだ。中学高校と運動部でみっちり体を鍛え、上下関係を身につけておけば、職人の世界でもやっていけるだろう。 仕事以外の時間は、少年が「やりたい」と願う「ごろごろ寝転がってテレビを見ていたい」というのを実現できる。

「やりたい」と思うものは誰にだってあるはずだ。それがりっぱなものではないとか、仕事じゃないとか、そんな理由で脳内却下してるに過ぎない。「やりたい仕事」を見つけるんじゃなく、「やりたいことをやるための仕事」を見つけるんだ。仕事は手段であって目的ではない。

だからいつまでも夢を追っていい。「音楽がやりたい」と「ミュージシャンになりたい」は別のものだ。音楽がやりたいだけなら、「昼の仕事」をしながらだってできる。そのためにフリーターという職業を選ぶなら、それはそれでいいと思う。もっと賢いやり方はあるだろうけどもね。音楽がやりたいのではなくミュージシャンになりたいだけなら、それは本当にやりたいことは何なのか考えなおすべきだ。ミュージシャンという仕事は、あくまでも手段だということを忘れてはいけない。

「個性」はあなたの歩いたあとにできる:

そうやって自分の生き方を見つけて行けば、今やるべきことが見える。実際に実現するかどうかはともかく、うだうだ悩んで何もしないよりずっといい。 そして何かをやっていれば、たくさんの物事が見えて来る。見識が深まる。視野が広くなる。 そうすると、「やりたいこと」の内容も変わって来る。楽しいことは他にもいっぱいあることに気付くからだ。そうしたらまたプランを練り直せばいい。

そうやって人間は、たくさんの分岐点を通過する。分岐点は無数にあり、同じ分岐点を通過する人は二人といない。

こうして人間には、その人だけの「経験」が積み重ねられ、それが「個性」になる。だから個性の無い人間なんていない。今は無個性に見えても、目標を設定し、それに向かい続け、たくさんの分岐点を通過してくうちに、自分だけの個性が身について行く。

個性とは、その人間が歩いて来た道そのものなのだ。

(@035)

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Sugano "狐志庵" Yoshihisa(E) @ 美紗緒ネットワーク <koshian@misao.gr.jp>
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