狐の王国


2005年12月29日(木) [過去の今日]

#1 Re: reply

伝わらない話になっちゃってすみません。

もちろんGPLが万能であるとは思いません。私が言いたいのは、GPLで自分のソフトウェアをライセンスする側の視点でも考える必要はあるはずだ、ということです。その視点を抜いてGNUは宗教だと言い切ってしまうのは、乱暴に聞こえてしまうのです。

もちろんソースを非公開にしておかなくてはならないようなプリンタドライバの受け皿となるべきGhostScriptやCUPSがGPLであるがゆえに、プロプライエタリなドライバが供給されないという事が事実であるなら、それは立派に批判に値する *1 とは思います。そういう意味ではLinuxも非GPLドライバを組み込むための手段を用意しておいてくれてもいいのかもしれませんね、MySQLみたいにデュアルライセンス形式とかで。

以下、せっかくご返事いただいたので、ポイントを個別にやります。

Linux ではない、 GNU/Linux と呼べ:

これはユーザランドがGNUシステムそのものなのだから、妥当な意見ではないでしょうか。GNUはプロジェクト名でもあり、組織名でもあり、OSの名前でもあるのですから。

また、Linus Torvalds氏はGPLを盲信してもGNUを信用してもいないと思います。そうでなければ、LinuxのCOPYINGファイルの冒頭で

 Also note that the only valid version of the GPL as far as the kernel
 is concerned is _this_ particular version of the license (ie v2, not
 v2.2 or v3.x or whatever), unless explicitly otherwise stated.

と、GPLの後継バージョンが適用されないことをわざわざ明言したりはしないでしょう。

松下vsジャストシステム事件:

これが批判されたのは特許の内容があまりにもショボすぎた上に、(たとえ常套手段にしても)本来侵害してるはずのMSではなく、SotecやJustSystemをターゲットにした弱いものいじめ的な側面があったからでしょう。

実際、知財裁判所では松下が敗訴してますよね。これはこれで正しかったのだと思います。

ソフトウェア特許が悪だと言われるのは、著作権との二重保護や、ソフトウェアのライフサイクルに比べて保護期間が長すぎる事なども原因だと思います。範囲が不明確になりがちであることももちろん重要でしょうけども。

あと、根拠レスな特許に対する意見というのは、特許制度自体がやたらに複雑であることにも起因してると思います。複雑すぎる制度は理解されないですから。そういう私自身も、特許をよく理解してませんし、今使ってるオープンソースのソフトウェアが特許で使えなくなるのはおもしろくない、というくらいの理解しか無いかもしれません。そういう人は実際に多いでしょうね。

GNUは模倣しかしない:

そもそもGNUはUNIX互換のOSを作ることを目標にしてたので、新規性・進歩性が無いのは当然だと思います。今、あらかた目標を達成したところで、どういうプロジェクトが出ているか、出てくるか、というのは一つ注目に値するでしょう。

他人の知的財産への敬意:

これの視点がもっとも重要な話だと思います。GPLなソフトウェアを利用する側だけが知的財産をもってるわけじゃなく、GPLなソフトウェアそのものも誰かの知的財産なわけです。GPLでライセンスされたソフトウェアが、なぜGPLでライセンスされてるのか、それを考える必要があるということです。

GhostScriptにしても、GPLだけでライセンスされてるのではなく、AFPLでもライセンスされてます。プリンタメーカーの協力が得られないのは、GPLのせいだけじゃないことはこのことからだけでも明白でしょう。

たぶんここに特許問題が絡んでるからわかりにくいのかと思います。

もちろん、特許を取得してる側からすれば、自分の発明が勝手に使われるのは許されないことでしょう。しかし、自分が苦心して書き上げた著作物が、サブマリン特許で特許料を請求されてしまうということも、本質としては同じではないでしょうか。

本当に新規性・進歩性がある特許なら、そんなことが日常的に起きるはずもないでしょう。ですが、現実には毎年何度かはニュースになるくらい起きています。そのような事件を起こす輩が、他人の知的財産に敬意を払ってるように見えないから問題視されるのでしょう。

悪いのは特許でもGPLでもないのではないでしょうか。特許やGPLの使い方が悪いだけではないでしょうか。そして、その悪い使い方の事例だけを見て、特許を無くしてしまえと言ってみたり、GNUは宗教だと言ってみたりするのも、本質的に同じものではないでしょうか。

(@663)


*1: 現実として今、品質がやや劣るが扱いやすいGuten Printドライバと、扱いにくいが品質は抜群のPIPSドライバとの間で悩んでる身としては、本当に批判したいと思う。 Open Printing System がんばれー、と思ったら、これもGPLなのか。モジュールによってライセンスが違うのかな?
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Sugano "狐志庵" Yoshihisa(E) @ 美紗緒ネットワーク <koshian@misao.gr.jp>
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