狐の王国


2007年05月28日(月) [過去の今日]

#1 MYUTA裁判はむしろWeb 2.0を否定してるんじゃないか

GIGAZINEは釣られたらしい という記事から辿って、 MYUTA事件の判決文が公開されました という記事。ここに 判決文別紙 が転載されている。

で、ざっと判決文だけ読んだのだが、釣られたかどうかはともかくとしてどのみちひどい判決だと思う。32ページ目あたりを引用してみよう。

なお,原告は,本件サービスにおける複製は,一時的にユーザのパソコンや本件サーバにされるものであって,コンピュータのメモリ内に一時的に複製されるソフトウエアと同じ道理であり,物理的にも規範的にも,すべてユーザが行っているといえる旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(3))。

しかしながら,そもそも原告の主張する一時的の意味が不明であり,一時的であれば複製権が制限される根拠を主張していない。そして,本件サーバにおける複製行為が本件サービスの中核をなしていることからすれば,上記主張は失当である。

俺の解釈が正しいとすれば、これはひどい話だ。つまるところ、ウェブアプリのデータはサーバ側にあるから、それは個人レベルのコピーではなく、著作権者の許可が必要だということだろう。

また、認証がかかっていて特定の人しかアクセスできなくても、そのサービス自体が公衆が利用するものだとすれば公衆送信だとも言っている(34P「自動公衆送信行為の該当性について」)。 これはとんでもないことだ。例えばGoogle Docsを使って気に入った詩を集めていたら、それだけで自動公衆送信に該当し、Googleが著作権侵害ということになる。オンラインストレージ全部どころかウェブアプリ全部が対象になるということじゃないか。

GIGAZINEが釣られた云々の記事 では ネタ元の記事のひとつ のコメント欄をこう引用してる。

やっと判決が読めました
ざっと読んだ限りでは、知財高裁などで示された著作権法関係判例の解釈の流れに沿いつつ、「本サービスのみに特化した」極めて穏当かつ適当な判決だと思われます。
本サービスの「仕組み」に関する裁判所の理解も十分ですし、被告(JASRAC)主張として「掲示板や一般のストレージサービスと本件は違う(p5)」とも明記されています。
#仕組みに対する記載は、下手なSEが書く概念設計書より詳細かつ分かりやすいレベルですね。
したがって、今回の判示は「MYUTA」に限るものであり、「ストレージ・サービス違法判決」ですらありませんでした。

本当にそうだろうか? 俺にはそうは見えない。5ページ(というか実際は6ページ)のオンラインストレージや掲示板とは違うという下りも、よく読むと単にそちらは音楽以外のデータもたくさんあって権利侵害のデータを特定困難だと言ってるに過ぎない。「この世の音楽のほとんどはJASRACのもの」と言ってるようなものではないか。そういう態度だから「権利侵害してるかもしれないから著作権料払え」なんてこと言えるんだろう。傲慢さしか感じないな。

同コメント欄では「3g2ファイルをサーバで変換してるのがまずかった」と書いてる人もいるが、そこは判決文に「ユーザーのパソコンにおいて(P3)」と書かれているし、そもそも食い違ってる。

一応俺もいくつか法律やら判決文やら読んできたが、そもそも日本語の意味と解離してるものも多く、普通に読んだだけでは意味を解釈できないことも多い。だからこの「ユーザーのパソコンにおいて」というのがサーバで変換されるという意味なのかもしれない。他のところも、一応日本語として解釈したつもりではあるが、日本語では俺の思った意味でも、法律文としては違う意味なのかもしれない。それは法律をきちんと勉強した人じゃないとわからないから、断定はしない。

でも、むしろ釣られてるのは 匿名ダイアリー書いてる人 なんじゃねえの、という気はする。

(@621)

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Sugano "狐志庵" Yoshihisa(E) @ 美紗緒ネットワーク <koshian@misao.gr.jp>
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