狐の王国


2008年03月24日(月) [過去の今日]

#1 向上心を持つことの功罪、持たないことの功罪

新卒で入社して一年 という記事。

はてな界隈を見てると向上心が湧き出てくるのだそうだ。そして自分の「生ぬるい」職場を飛びだしたくなるんだと。

この記事を書いた人に特に言うべき言葉を、俺は持っていない。

ただ、「向上心」という言葉はいろいろと功罪があるなあという感想を持った。

意外と多くの人たちというのは、現状への不満をかかえていても向上心を持たない。周囲や環境が変わってくれる事を祈るばかりで、自分からなにかアプローチをしようとはしない。

俺は別にそれが悪いとは思わない。彼らはちゃんと土日に休みをとるし、休日は休日らしく体を休めたり、平日にはでかけられない所にでかけたりして過ごしている。多くの人間がそうであるからこそ、社会全体はそのように動いてて、休日の観光地は人混みになる。

そういう前提で社会は成り立っているし、彼らのような人たちが幸せに暮らせる社会が豊かな社会というものだろう。何より文明的な人間らしい生活だと思う。

相田みつおではないが、負ける人がいるから勝つ人がいるのである。みんながみんな向上心を持って自己研鑽にはげんだところで、市場で勝ち残れるのはごく少数だ。

技術以外の職場に目を向ければ、レガシーな仕事をしてる人はごまんといる。いまだに汲み取り式トイレはあちこち残っており、そこから糞尿を回収し、処理する仕事をしてる人たちもいる。

もちろんその仕事を選んでやってるかとか、しかたなくやってるかとかは、本人に聞いてみないとわからない。トイレに限らないが、そういうレガシーな仕事は情報技術のように更新が頻繁でもなければ早くもないので、数年もやればそれ以上の向上はほとんど無いかもしれない。 *1 それでもそれは重要で、不可欠な仕事なのだ。

そういったレガシーな世界の重要性については これ読んで「転職考えろ」とか言ってるやつってアホだろ という記事が上手に指摘している。

それは、そういった枯れた技術・知識でも、市場さえきちんと見つければ十二分に食っていけるという話なのであって、なんでそんな安定している(もっといえば、社会に目に見える形で安定を供給している)仕事に就いてるのに悩む必要があるの?ってこと。

そう、新技術は役に立つかどうかまだはっきりしてないから新技術なのであって、役に立つことが確定したら(つまり定着して実際に使われている状態になったら)、もうそれはレガシーなのである。

レガシーな仕事はほんとうに安定していることだろう。実際に役立ってるということはそこにお金が回ってるということだからだ。前にも言ったが、「お金を頂く」というのは「役に立った」からなのである。役に立つかどうかわからないところにお金を出してくれるのは、投資家かよほどのお人好しくらいのものだろう。

俺ははてなやライブドアの給料を知らないが、そう多いものではないことは想像が付く。彼らはまだ成長途上の市場にいるし、お金の回りもそう多くは無いのも目に見えている。将来はわからないけどね。

それでも新しいものに飛びつくのは、自分がそうせざるを得ないだけの衝動を内に抱えているからだろう。

今すぐ人の役に立つものではなく、将来役に立つものを作りたい。新技術を使って新しい未来を提示したい。そういう欲求が自分の中に、どれだけ強くあるか。

新しい市場における向上心なんてものは、そういった欲求や衝動に突き動かされてないとなんの意味も持たないだろう。

しかしその向上心も、「人様のお役に立つ」ことが無ければお金にはならない。

そこを会社が考えてくれるというのは実は楽な話だとも言える。

へたな向上心を持つより、そういう中で自分の仕事をひたすらこなすことで腕をあげていく。それが「普通の生き方」というものなのかもしれない。

だから普通の職場は、真面目な人から見るとものすごく生ぬるい。普通に仕事と関係無い雑談もしてるし、冷蔵庫にはいつもビールが置いてあったりもする。必死に仕事をこなしてる所なんて実はそう多くもなくて、忙しくないわけじゃないけど和気合い合いとした職場ってのがけっこうある。

「世の中は厳しいんだ」と言われて育って覚悟して社会に出てみたら、みんな適当すぎて拍子抜けした、なんて経験がある人はきっと俺だけじゃないだろう。学校の先生なんて大学で習う基礎的な教育論すら頭に入ってない *2 ものだし、学生時代にあれほど言われた5分前行動なんて実際にやったら早すぎて相手に迷惑なだけだ。

コンプライアンス? 法律? 新理論? なにそれ? 実際の社会じゃそんなもん役に立たねえよ。それよりなんかおもしろいこと無い?

世の中の多くはそんなもんだったりするわけだ。

もちろん、自分の仕事が10年後もあるかまったく考えないというのは問題だと思う。時代は動いてるのに脳味噌がそのまんまじゃそりゃひどい目にもあうさ。自分に被害が及ぶとわかって手遅れになってから文句だけ言っても、そりゃ誰も助けてはくれない。

本来、そういう人たちにメッセージを伝えるのがマスメディアの役割、なんだけどね。

確かにはてな界隈は、もしかしたらそういう「向上心」を煽るメッセージが多いかもしれない。俺がなんとか頑張れてるのもそのおかげなのかもしれない。

しかしそれに煽られすぎる人がいるんだとしたら……

いや、それはむしろ、いいことなのかもしれないよ?

(@517)


*1: もちろん何十年と修行してようやくできるようになる技もあるけどね。そういうのを「職人」という。最近ただの日雇い肉体労働者を職人と呼ぶ若者がいるが、それは違うと言っておきたい。
*2: あたりまえだけどもちろんちゃんと頭に入れてる人もいるはずよ? 俺ほとんど見たこと無いけど。
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#2 いまさらTwitter repliesなRSSがあることに気づいたのでPlaggerでチェックするようにした

けっこうTwitterのrepliesを見逃してることに最近気づいて、どうにかしたいなあと思ってたのだが、よくよく見たらRSSが存在することに気づいた。

しかし http://twitter.com/statuses/replies.rss なんてURIになってるので普通には取得できそうもない。が、BASIC認証でいけるらしい。

ということで 自分宛の発言を GMail へ という記事にあったYAMLをぱくって使うことに。

ただこれだと毎回同じのが来ちゃうのでDedupedモジュール挟みこんでこんな感じ

 plugins:
  - module: UserAgent::AuthenRequest
    config:
      host: twitter.com:80
      auth: basic
      realm: Twitter API
      username: username
      password: password

  - module: Subscription::Config
    config:
      feed:
        - url: http://twitter.com/statuses/replies.rss

  - module: Filter::Rule
    rule:
      module: Deduped
      compare_body: 1

  - module: Publish::Gmail
    config:
      mailto: mygmailaddress
      mailfrom: mygmailaddress
      mailroute:
        via: sendmail
        command: /usr/sbin/sendmail

(@968)

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Sugano "狐志庵" Yoshihisa(E) @ 美紗緒ネットワーク <koshian@misao.gr.jp>
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