狐の王国


2006年01月06日(金) [過去の今日]

#1 見直しがすすむGPL(2/3)

汚し飯 でハッケソ。

むう、やっぱりソフトウェアと特許はややっこしい問題を抱えてるなあ。フリーソフトウェアの場合、商用のソフトウェアとは違って、製作者と配布者が別個であることが多いため、配布者が特許違反で訴えられる可能性があることは特に重要だろう。改変再配布者にとっても、自分の改変した部分に特許違反が無くても訴えられる可能性がある。実際に、ジャストシステムと松下の裁判では、マイクロソフトのライブラリにあった特許違反(最終的には否定されたが)をジャストシステムやそのソフトがプリインストールされてるPCを売ってたソーテックが訴えられるという、ある意味非常に深刻な状況があった。GPLソフトウェアに対して特許権侵害で訴訟を起こす相手には罰則が必要ではないかという意見もあるそうだ。

これらは次期版GPLに向けて現在議論されている問題だ。「そうした罰則を定めれば、特許武装した著作権侵害者からオープンソースコミュニティを守るのに役立つかも知れない」と、ソフトウェアに対する特許全般を声高に批判するStallmanはいう。

このストールマンの言葉に問題が集約されてるね。「特許武装した著作権侵害者」だってよ。

通常、特許で武装してたとしても、著作権を侵害することは難しいだろう。例えば「隙間風/がなる扉に/乗る雪よ」という俳句があったとして、各節の頭を切り出すと「すがの」という自分の名前になる特許があるからそれは特許侵害だ、などと言うような事はまずありえまい。

しかし、ソフトウェアは著作物でありながら工業製品としての側面を持つ(というよりむしろ本質だろう)ため、特許対象にもなり得てしまう。それゆえ著作権と特許権が衝突してしまうのだろう。これは著作権との二重保護にも問題があるし、ソフトウェア上の特許そのものにも問題があるようだ。

wikipediaのソフトウェア特許の項目 が参考にはなるが、やはり非常にわかりにくい。どうもいくつかの問題が混在してるようだが、ちょっと正確に切り分けられる自信が無い。

だが、わかったのは一つはどこまでがソフトウェア特許なのかという「範囲問題」であること。もう一つはソフトウェア特許によるコストが問題視されるほど膨大になりつつあるということ。そして三つめは、ソフトウェアは先行技術調査が難しいということだ。

要するに特許法で保護するのに不適な特性を持っているということだろう。なれば、著作権との二重保護も含めて、ソフトウェア特許に反対する充分な理由はあるということになる。

調べる過程で見付けた(というか思い出した)のだが、マイクロソフトはPC販売メーカー各社に対して、特許非係争条項をOEM契約に盛り込んでるそうだ。要するに表題記事中のBruce Perens氏の言うような、

「次期版GPLに、例えば、ある人物が特定のフリーソフトウェアに関する特許権を行使したら、その人間のフリーソフト使用権が消滅するといった、相互防衛条項が盛り込まれることを期待している」

というのは、このマイクロソフトの事例と同じことをやろうということだろう。 こういう契約自体は批判もあるようだが、現状では致し方無しということになるのだろうか。

だが、法律は変わる可能性も大きく、また批判が高まってるソフトウェア特許においてはその可能性も少ないとも言えないだろう。実際、 欧州議会はソフトウェア特許法案を否決 している。

さらにGPLを適用するためにGNUが用意してる例文には、GPLの後継バージョンが自動的に適用されることが書かれている。こういう状況においてGPLv3にそのまま特許非係争条項を盛り込むような形は、やはり望ましくないのではないか。せめて特許非係争条項付きGPLというような、別のライセンスを用意するべきではないだろうか。そうでなければUNISYSのGIF特許事件のような、後出しジャンケンになってしまわないか。

知的財産保護は重要だが、他人の知的財産や生産活動をおびやかす程の保護は悪でしかないだろう。現状の特許制度がまさにそういう性格を帯びて来ているのではないかという疑念、そしてソフトウェアライセンスにおける特許非係争条項にそういう性格が無いかという疑念、この二つはトンネルと出口と入口のように見える。これらは、両面から掘り進める必要があるだろう。

(@308)

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Sugano "狐志庵" Yoshihisa(E) @ 美紗緒ネットワーク <koshian@misao.gr.jp>
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