狐の王国


2005年10月19日(水) [過去の今日]

#2 求められる水準

最近とみに思うのが、消費者の需要という点から求められてる製品の水準、品質というのは相当に低いところにあるのではないだろうか。

おそらく消費者の需要を満たすだけの製品を作っていれば、それは大きな欠陥を抱え、クレームが大量に発生することになる。つまり、消費者はその製品のプロではないが故に、欠陥を欠陥として認識しえないということだ。

例えばOSにしても、フリーズが発生したり、アプリケーションが落ちたりして、データが消えたとしても、それを元にOSの製造元を訴えると本気で考えてる人は見たことが無い *1 。それはそういうものだとして、淡々と受け入れ、淡々と使い続けるのである。

特に若い女性に顕著なのだが、見たことも聞いたこともないようなブランドロゴがでかでかと書かれただけの安物のアクセサリやバッグを誇らしげに持ち歩き、これはこんなに高いんだぞと自慢気に言う人がいる。もちろんただの安物の製品なので、品質は最悪なのだが、本人達はまったく気にしてない様子だ。これも要するに、値段相応の品質に達してない製品でも、おそらく若い子向けの雑誌等 *2 のメディアを駆使してブランド力を上げることによって、確実に売れるという見本なのであろう。

このような事例を見るにつけ、一般消費者の求める品質水準というのがかなり低いのではないかという冒頭の疑念が湧き起こる。そしてここからが本題なのだが、blogの流行もそれに照らしあわせるとおもしろいのではないだろうか。

blogはご存知のように、プロのライターもいるにはいるが、大多数は素人の書く雑文である。それはそれ相応に品質が低いことが推測されるし、実際にその通りである。しかし、みながblogを読み、blogを書くことが定着しつつある。これもやはり、今までプロの編集者がプロのライターの記事を取捨選択し、プロの視点で水準を見極めていたものが、その一種のフィルタを通さず流れ出したものが受け入れられてるということである。

とみにblogという現象に焦点をしぼると、プロの水準というものが実はとてもくだらないものであって、その水準に達してないとされるものの中に、もっとももっとおもしろいものがあったということにも見える。それはプロの傲慢や見当違いが、文章の世界に蔓延してたとも言える話である。

さてしかし、プロの水準というものが崩壊してしまったとしたら、いったいどうなるのか。我々は低品質の文章の海を泳ぎ、そこにあるかもわからぬ宝石のような高品質の文章を探さねばならないのだろうか。

実はこれはすでに解決してる問題である。それは検索とリンクである。blogはblogという名がつく前からリンクによって連結され、今ではトラックバック等の技術も存在しており、リンクによる連結は実に細かくなっている。また、検索エンジンはリンク数をスコアに採用しており、たくさんの人がリンクしたものを上位に挙げるようになっている。これらにより、高品質の記事は人の目に止まりやすくなっているのである。

となると、困るのは我々消費者ではなく、今お金をもらって文章を書き、出版しているプロの方々であろう。消費者は素人のお遊びで書いた文章で満足して、プロの文章を求めなくなったとすれば、わざわざお金を出して文章を読むようにはならないだろう。

そしてそれは文章だけでなく、音楽や映像等にも言えるようになるかもしれない。そうなれば著作権ビジネスは崩壊である。それを防ぐために企業が行動するとしたら、それはおそらく「囲い込み」ではないだろうか。商業出版を餌に専属契約を結ばせ、実際には飼い殺しにしておく。今でも音楽の世界では聞く話である。

しかしこれではウェブの世界で良質なコンテンツが減るだけで、低品質で満足する事を覚えた消費者により商業出版が無視される事に変わりは無い。これを解決するには、一般消費者を高品質志向に変えて行かなければならない。そのためにはまず教育に力を入れることである。教養が身につけばそれは自動的に品質の大切さを理解することになるからだ。世の文章音楽等の出版社のみなさん、投資するなら教育が先ですよ、ということである。

(@275)


*1: もちろん、実際には使用許諾書に訴えられないような文が入ってるのだけども、そもそも消費者はこれを読んでいないことが多い。
*2: 確実な論拠は無いが、どうやら素人モデル採用による一種のサクラを散りばめてるようである。雑誌モデルをやってる子が友達や友達の友達にいる、という状態を作り上げ、そういう子らを中核に独特な流行を形作る戦略が見え隠れしている。
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Sugano "狐志庵" Yoshihisa(E) @ 美紗緒ネットワーク <koshian@misao.gr.jp>
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